1NTTドコモの会社概要
NTTドコモとは、NTT主要5社の一角を担う、携帯キャリアの国内最大手です。
「携帯電話料金は4割引き下げられる余地がある」という政府の意向を受け、2019年6月には新料金プランである「ギガホ」「ギガライト」をスタート。
これにより、モバイル通信サービスの収入が伸び悩んだため、dポイントや動画コンテンツサービスなど、非通信事業への取り組みを強化しています。
また、パートナー企業と協力しながら新たな価値を協創していくという「+d」戦略を推進しています。
(1)会社の歴史
元々はNTTの一事業部でしたが、1991年に独立して「エヌ・ティ・ティ・移動通信企画株式会社(NTTドコモの前身)」が設立されました。
その後、Do Communications Over The Mobile Network(移動通信網で実現する、積極的で豊かなコミュニケーション)を名前の由来とし、現在の「NTTdocomo(ドコモ)」に社名変更されました。
年度 | 主な出来事 |
1991年 | NTTドコモの前身であるエヌ・ティ・ティ・移動通信企画が設立 |
1999年 | インターネットサービス「iモード」の提供開始 |
2005年 | ケータイクレジット「iD」の提供開始 |
2013年 | NTTドコモへ商号変更 |
2015年 | 「dポイント」の提供開始 |
2017年 | 動画配信サービス「DAZN」と提携 |
2020年 | フリマアプリ「メルカリ」と提携 |
2NTTドコモの企業研究
(1)業績推移
ドコモの業績を見てみると、直近の決算では減収減益です。
価格を大幅に下げた新料金プランや、*電気通信事業法の改正によって携帯端末の販売量が減少したことが大きく影響していると考えられます。
*電気通信事業法
通信各社による利用者の過度な囲い込みを防ぐため、2019年10月に改正された事業法。2年縛りの禁止や、通信料金と端末代金の完全分離などが施行されました。詳しくは下の記事の「最近の事業動向」を参考にしてください。
(2)事業領域
NTTドコモの事業領域は、「通信事業」「スマートライフ事業」「その他の事業」に大きく分けられます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
通信事業
通信事業は、売上の約80%を占めている中核事業です。主にモバイル通信サービスや光通信サービスの提供を行っています。
特に、モバイル通信サービスの契約数では長年トップを維持しており、安定的な収益を確保しています。
しかし、国内の人口減少や携帯市場が飽和していることもあり、今後の成長はあまり見込めないでしょう。
スマートライフ事業
スマートライフ事業では、dTV・dショッピングなどのコンテンツ・ライフスタイルサービスや、d払い・dカードなどの金融・決済サービスを展開しています。
現在の売上比率は約11%ですが、収益の柱である通信事業が頭打ちなので、NTTドコモとしてはこうした非通信事業の拡大を急いでいます。
また、非通信事業の拡大において重要となるのが、会員基盤です。
NTTドコモは日本最大級の会員基盤を有しており、同社が提供しているdポイントの会員数は、2019年に7,500万人を突破しました。
この強固な会員基盤を軸に、新たな収益機会の創出を狙っています。
出典:ドコモ通信 | ドコモQ&A
その他の事業
その他の事業では、ケータイ補償サービス・あんしん遠隔サポートといった、あんしん系サポートや、法人ソリューションなどを展開しています。
特に法人向けの需要は、今後5Gの発展によって、さらに加速していくでしょう。
また、NTTドコモでは、パートナー企業と協力しながら新たな価値を協創していくという「+d」の戦略を推進しており、すでに3,300社以上の法人パートナーと連携しながらソリューションの幅を広げています。
出典:NTTドコモ公式HP | 社会的課題の解決をめざす+dの挑戦
(3)NTTドコモの強み・特徴
次は、NTTドコモの強みや特徴について見ていきましょう。
強み・特徴① 携帯シェアのNo.1
NTTドコモは、国内の携帯シェアでは業界No.1の約44%を占めています。
また、NTTドコモが長年トップシェアを誇っている理由の1つに、解約率の低さが挙げられます。
下のグラフを見ると、ソフトバンク・KDDIに比べて、NTTドコモの解約率が低いのが分りますね。
では、なぜ解約率が低いのでしょうか? それは、「長期契約者への特典が充実していること」と「通信品質の高さ」が考えられます。
NTTドコモは、ダウンロード・アップロード時の通信速度が3社の中でトップクラスに速く、基地局の数も多い(通信エリアが広く安定している)ので、そうした点が利用者の満足度の高さに結びついているのでしょう。
出典:NTTドコモ | NTTドコモの事業展開について
強み・特徴② 5Gへの取り組み
5Gを使用するために重要な周波数帯が日本政府によって通信各社に割り当てられたのですが、NTTドコモは3枠を確保しています。(KDDI3枠、ソフトバンク2枠、楽天2枠)
出典:総務省 | 割当結果まとめ
KDDIとは同じ枠数ですが、ソフトバンク・楽天と比べると枠数が多く、その分5Gの取り組みに関して政府から期待されていると言えるでしょう。
また、2024年までの設備投資額や5G基盤展開率(カバー率)をみても、NTTドコモが通信各社の中で最も5Gに力を入れていることが分ります。
出典:総務省 | 5G特定基地局の開設計画に係る認定申請の概要
(4)NTTドコモの弱み・課題点
NTTドコモの強みをチェックしたので、次は弱みや課題点も見ていきましょう。
弱み・課題点①携帯シェアが縮小している
NTTドコモの携帯シェアは長年トップの座を維持していますが、数年前と比べると徐々に割合が減っています。
また、国内の携帯市場は飽和しているので、携帯事業に頼るビジネスから脱却する必要があります。
今後、非通信領域(スマートライフ事業・その他の事業)がどれだけ伸びるかが鍵になりそうです。
(5)競合(KDDI・ソフトバンク)との比較
次は、競合であるKDDI、ソフトバンクと比較しながら、3社の違いを確認しましょう。
業績
直近の業績を見ると、KDDIが売上・純利益ともにトップです。
NTTドコモが携帯シェアでトップにも関わらず、売上・純利益でKDDIに負けている理由としては、「固定通信」と「移動通信」をグループ内で分担しているためです。
NTTグループには他にも「NTT東西」や「NTTコミュニケーションズ」といった通信事業を行う会社が存在し、その中で「NTT東西は固定通信、NTTドコモは移動通信」というように、細かく事業領域が分けられています。
そのため、グループ他社で発生した通信事業の売上はNTTドコモの売上にカウントされず、上のような結果になります。
財務
NTTドコモの財務は非常に堅実であり、会社の安全性を示す自己資本比率では3社の中でトップの69.7%です。この数値が高いほど、倒産しにくいと言われています。
NTTドコモ | KDDI | ソフトバンク | |
営業利益率 | 18.37 | 19.58 | 18.75 |
ROE | 11.14 | 14.93 | 37.87 |
ROA | 7.95 | 7.57 | 5.31 |
自己資本比率 | 69.7 | 45.8 | 10.2 |
営業利益率・・・本業で稼いだ利益を示す。目安は10%以上。
ROE ・・・企業の収益性を示す。目安は10%以上。
ROA・・・経営の効率性を示す。目安は5%以上。
自己資本比率・・・企業の安定性を示す。目安は40%以上。
携帯電話契約数シェア
携帯のシェアは、ドコモが44.1%でトップ、その下にKDDIとソフトバンクが続いています。
国内の携帯シェアでは、長年NTTドコモがトップの座を維持しています。
参照:一般社団法人 電気通信事業者協会「事業者別契約数」
携帯シェアに関する詳しい情報は、こちらの記事で紹介しています。通信業界を志望する方は参考にしてください。
(6)中期経営計画
2020年代の持続的成長に向け、NTTドコモでは中期経営計画を発表しました。中期経営計画における主な方針は以下の3つです。
【顧客基盤をベースとした収益機会の創出】
dポイント会員や法人パートナーの拡大に努め、より強固な顧客基盤をつくる。また、その顧客基盤を活かし、スマートライフ事業や法人事業における新たな収益機会を創出する。
【5Gによる成長】
5Gインフラを構築するために、約1兆円を投資する。また、5Gを本格導入することで、身体感サービス(新体感ライブ、VRなど)の提供や、社会課題解決・地方創生(遠隔医療、映像解析による防災など)を目指す。
【お客さま還元の実施とお客さま接点の進化】
料金プランの説明が分かりにくいというお客さまの声を受け、料金プランのシンプル化や説明方法の見直しなどを行う。また、ドコモショップでの待ち時間・応対時間を約半分にすることを目指す。
(7)最近のニュース
メルカリ・メルペイとの提携
2020年、NTTドコモとメルカリ、メルペイの3社が業務提携することを発表しました。
これまでも協力関係にあった両社ですが、それぞれのアカウントやポイントを連携するなど、さらに協力関係を深め、相乗効果を加速させる方針です。
メルカリは若年層のユーザーを多く抱えているため、NTTドコモとしては課題である若年層の強化に期待ができそうです。
NTTによる完全子会社化
2020年9月、NTTは子会社であるNTTドコモの全株式を取得することで、完全子会社化しました。
5Gで海外勢に遅れをとっている現状を打開するため、経営を一体化することで意思決定を迅速化し、国内外での競争力を強化していく方針です。
また、菅総理による「携帯料金の値下げ圧力」も完全子会社化に大きく影響していると考えられ、経営の効率化によってコストを削減しながら、値下げに応じていくと予想されます。
3NTTドコモの働き方
(1)年収
NTTドコモの平均年収(総合職)は872万円でした。
NTTグループの中では、トップクラスに高い水準です。
年齢 | 総合職社員の年収推移(推定) |
25歳 | 400〜500万 |
30歳 | 650〜750万 |
35歳 | 800〜900万 |
40歳 | 900〜1100万 |
45歳 | 1000〜1300万 |
50歳 | 1000〜1600万 |
(2)残業時間、福利厚生
平均残業時間は17.9時間でした。有給休暇もほぼ100%取得可能なので、働きやすい環境があります。
また、福利厚生に関しては、住宅補助が7万円出たり(独身の場合は3万円)、ディズニーやUSJに格安で行くことができるなど、充実しています。
NTTグループということもあり、残業時間や福利厚生に不満を持つ社員は少ない印象です。
4NTTドコモの選考情報
(1)選考フロー
ES・Webテスト→1次面接→2次面接→最終面接→内定
ES設問
・学生時代にチャレンジしたエピソードを語ってください。(400字以内)
・ドコモで叶えたい夢を教えてください。(300字以内)
筆記試験
例年通りであれば、WebテストはWebテスティングサービスという自宅受験型のSPIです。
また、年度によってはGDも実施されるようなので、随時マイページや採用サイトで確認しましょう。
(2)採用数
NTTドコモでは、修士・大卒合わせて年間約400人の新卒を採用しています。
男女別
年度 | 男女別(男性・女性) |
2018 | 334人(225・109) |
2019 | 421人(275・146) |
2020 | 400人(280・120) |
専攻別
年度 | 専攻別(文系・理系) |
2018 | 334人(170・164) |
2019 | 421人(206・215) |
2020 | 400人(-) |
大卒・修士別
年度 | 大卒修士別(大卒・修士) |
2018 | 334人(196人・138人) |
2019 | 421人(250人・171人) |
2020 | 400人(-) |
5NTTドコモの面接対策
(1)過去質問
・入社後のキャリアをどのように歩んでいきたいですか?
・ドコモで何をやりたいですか?
・ドコモで叶えたい夢は何ですか?
・なぜ他の通信会社ではなくドコモなのですか?
・ドコモと競合(KDDI・ソフトバンク)の違いは何だと思いますか?
・スマホに足りないものは何だと思いますか?
NTTドコモの面接では、「入社後のキャリア」や「入社後に実現したいこと」について、よく聞かれるそうです。
企業分析をするだけでなく、入社後にどんなことをやりたいのかを具体的に考えておきましょう。
(2)志望動機例
私の夢は、技術やアイデアを通して今までできなかったことを可能にし、それを社会に広め少しでも暮らしやすい世の中づくりに貢献することです。(中略) 御社は実に幅広い事業分野におけるサービスを創製しており、その実績と技術力、挑戦心に魅力を感じております。またエンドユーザー数が圧倒的に多いことから、社会に広く影響を与えるサービスに関われると考えます。(出典:就活会議)
私がドコモを志望する理由は、常に安定した、障害の起きない通信を実現したいと考えたからです。日常的に起きている通信障害をはじめとして、災害時の通信障害等、発展を続けている通信技術にも課題があります。本当に必要な時に、十分なリソースを確保し、円滑な通信をできる世界を私は実現したいです。(出典:就活会議)
(3)求める人物像
NTTドコモでは、求める人物像として「挑戦心」と「行動力」の2つを掲げています。
実際にESでも「学生時代にチャレンジしたエピソードを語ってください」という設問があるぐらいなので、会社側はこの2つの視点をかなり重視していると言えるでしょう。
これまでNTTドコモには通信という安定した収益源がありましたが、市場の飽和や政府の圧力を受け、戦略の転換が求められています。
そのため、そのような状況の中で積極的に新しいことに挑戦し、行動できる人材を求めていると考えられます。
6【NTTドコモ】まとめ
今回は、NTTドコモについて紹介しました。企業について十分に理解した上で、選考に臨みましょう。
【NTTドコモまとめ】
・携帯キャリアでは、国内トップシェアを誇る。
・「通信」「スマートライフ」「その他」の主に3事業から構成されている。
・市場の飽和や政府の圧力によって通信事業が伸び悩む。
・近年では非通信領域である「スマートライフ」「その他」に力を入れている。
・解約率の低さと5Gへの取り組みが強みとして挙げられる。
・「挑戦心」と「行動力」を持った人材が求められている。
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